ビデオカード
ビデオカードはPCの世界を私たちに見えるようにしてくれる
ビデオカードは描画処理を担当するパーツである。
中にはGPUという描画処理専門の演算装置を持っており、これがなくては画面を表示することはできない。
描画機能自体はマザーボードに内蔵されていることもあるが、内蔵の描画機能は貧弱で、通常使用なら問題はないが3Dゲームなどの高度な描画機能が求められる場合はビデオカードを搭載する必要がある。
逆にゲームをしないならビデオカードは必要ではない。 |
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念を押しておくが、ビデオカードは必ずしも必要なパーツではない。
PCでゲームをしたいユーザーのみに必要なパーツだ。
もちろんより快適な動作を求めるのならゲーマーでなくても導入する価値がある場合もあるが、必須ではないということを覚えておこう。
ビデオカードの選び方
ビデオカードを選ぶときは下の点について注目しよう。 ・ビデオチップのメーカー、種類
・インターフェース
・内蔵メモリ容量
・冷却能力
・出力端子の種類
・付加価値
・メーカー
・「自分のやりたいゲーム」に合わせる
これらの点に注目して自分のやりたいことに合わせた最良のビデオカードを選ぼう。
1. ビデオチップのメーカー、種類
現在のビデオチップ市場はほとんど「AMD」(エーエムディー)と「NVIDIA」(エヌヴィディア)という2つのメーカーの独占状態になっている。よってビデオチップを選ぶときもこの2つのメーカーの製品の中から選ぶことになる。
まずは現在主流のビデオチップをまとめた表を見てみよう。
※ここでの主流のビデオチップとは最新世代と一世代前のチップを指すこととする
チップ名 |
コアクロック |
メモリクロック |
シェーダ数 |
AMD |
RADEON HD4870 X2 |
750MHz |
3.6GHz |
1600SP[800SP×2] |
RADEON HD4850 X2 |
625MHz |
2.0GHz |
1600SP[800SP×2] |
RADEON HD4870 |
750MHz |
3.6GHz |
800SP |
RADEON HD4850 |
625MHz |
2.0GHz |
800SP |
RADEON HD3870 X2 |
825MHz |
1.80GHz |
640SP[320×2] |
RADEON HD3870 |
775MHz |
2.25GHz |
320SP |
RADEON HD3850 |
670MHz |
1.66GHz |
320SP |
RADEON HD3650 |
725MHz |
1.60GHz |
120SP |
RADEON HD3470 |
800MHz |
1.90GHz |
40SP |
RADEON HD3450 |
600MHz |
1.0GHz |
40SP |
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灰色:最新世代 白色:旧世代 |
チップ名 |
コアクロック |
メモリクロック |
シェーダ数 |
NVIDIA |
GeFroce GTX280 |
602MHz |
2.2GHz |
240SP |
GeFroce GTX260 |
576MHz |
2.0GHz |
192SP |
GeFroce 9800 GX2 |
600MHz |
2.0GHz |
256SP[128×2] |
GeFroce 9800 GTX+ |
738MHz |
2.2GHz |
128SP |
GeFroce 9800 GTX |
675MHz |
1.8GHz |
128SP |
GeFroce 9600 GT |
650MHz |
1.8GHz |
64SP |
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灰色:最新世代 白色:旧世代 |
実際には細かい違いでもう数種類ほどあるが、大体こんな感じである。
グレーで示したチップが最新世代、白が旧世代であり、世代ごとに上に行くほど高性能という位置づけになっている。
表の項目であるが、チップ名やコアクロック、メモリクロックは説明しなくても分かるだろう。
シェーダ数というのはGPUの中の画像を作り出すための装置、とでも言えばいいだろうか。
このシェーダの数が多ければ多いほどより高速でより綺麗なグラフィックを表示することができる。
まぁとりあえずは数が多いほど性能が高いという認識でOKだ。
なお、SPというのはシェーダプロセッサの略で、シェーダ数の単位のようなものである。
表を見るとチップの種類がとてもたくさんあるように見えるが、よく見ると数種類に分けることができることに気づく。AMDなら「HD3800」、「HD3600」のように、NVIDIAなら「8800」、「8600」のように、である。この大きな違いが、チップの種類や性能の違いになっていて、さらに「GT」「Ultra」などの末尾に付く言葉でクロックの違いなどを表している。
2. インターフェース
インターフェースという言葉にはいろいろな意味があるが、ここではコネクタの形状のことを指す。当然マザーボードとビデオカードのコネクタ形状があっていなければ接続することができない。
現在一般に使用されているインターフェースは「AGP」と「PCI-Express x16」の2種類があるが、現在ではほとんど完全にPCI-Expressx16に置き換わっている。何か特別な要求でもない限りはPCI-Expressx16接続のものを選んでおこう。
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上がAGP、下がPCI-Expressx16のコネクタである。
実際に製品を購入するときは箱や仕様表などにどちらか書いてあるためわざわざ見極めなければならない場面はないが、参考までに。 |
3. 内蔵メモリ容量
PCに搭載するメモリ(メインメモリ)とは別に、描画処理専用のメモリ(ビデオメモリ)がボードに搭載されている。ビデオメモリ容量が多いほど処理は高速化するので、性能を追求するなら容量の多いものを選んでおきたい。
ビデオメモリ容量はローエンド製品で128MB、ミドル・ハイエンド製品では256MBや512MBが一般的である。
4. 冷却機構
現在のビデオチップは高性能化が進み、CPU以上の発熱量になっているものもある。
そのためそのビデオチップを冷却する仕組みにも各社がいろいろな工夫をしている。
チップの発熱を制御するのはもちろんだが、快適なPCを作るためには静穏性にも考慮してビデオカードを選択したい。
ビデオカードの冷却機構には大きく分けて2種類ある。
一つはファンを搭載しているもので、高い冷却性能が得られるため、ほとんどのボードがファンを搭載するタイプである。
とくにハイエンドモデルのボードだと大型の冷却ファンを搭載しており、となりの拡張ボード用スロットに干渉してしまったり、完全に埋まってしまうタイプのものもある。
当然ファンが回るため、騒音も少なからず発生してしまう。
これは隣のスロットを完全に占有するタイプの大型クーラーを搭載している。
ハイエンドモデルを使用したい場合は相応のサイズと騒音を覚悟する必要がある。
もう一つのタイプはファンを搭載していないファンレスタイプのボードである。
こちらはファンではなく金属を用いて熱を拡散して冷却する仕組みなので騒音は発生せず、完全に無音なのが特徴。
だが、その反面冷却能力に限度があるため、主に発熱量の少ないローエンドやミドルレンジのビデオカードに採用が多く、発熱の多いハイエンドボードにはあまり搭載例がない。
静穏性を重視するユーザーは選択肢に入れるといいだろう。
ただし、その構造上PCケース内の冷却には気を配らないと十分な冷却ができず、故障したりすることがあるので注意。
このように”ヒートシンク”という放熱板が取り付けられている。
この2種類のうちから選択するのだが、ファンレスタイプは種類が少ないし、冷却に気を遣う必要があるため初心者には確実なファン搭載タイプのボードをお勧めする。
5. 出力端子の種類
ビデオカードからモニタに接続するための端子の規格にもいくつか種類がある。
自分の使用したいモニタにあった端子をビデオカードが持っているかどうか確かめよう。
まずはどんな規格があるのか紹介する。
●アナログRGB(VGA)
名の通り赤(R)、緑(G)、青(B)の色信号をアナログ方式で伝送する規格。D-Sub15ピンという端子を用いる。ほとんどのビデオカードには端子が搭載されている。
アナログ伝送であるためブラウン管モニタに最適であり、液晶モニタには向いていないのだが、アナログRGBは普及率が高いため、液晶モニタでもアナログRGBを採用しているものが多い。
D-Sub 15ピン
●DVI
デジタル伝送用の規格。デジタル伝送なので液晶モニタに最適である。
●TV出力
テレビに画像を出力するためのもので、Sビデオ出力端子を用いる。ほとんどのボードに搭載。
Sビデオ出力端子(イメージ)
さて、次にこれらの端子の中でどの端子がいくつ必要なのか考えよう。
まずどんなモニタを使うかだが、おそらく大半のユーザーは液晶モニタを使用するだろう。その場合アナログRGBかDVIを使用するわけだが、DVI端子を搭載したモニタは数が少なく高価なため、あまり画質にこだわらなければアナログを選ぶ。当然使いたいモニタが決まっていればそのモニタの入力端子に合わせた端子を使用する。
ビデオカードの端子レイアウトはそんなに種類がないので自分にあったレイアウトはすぐに見つかるだろう。
◎アナログRGB×1+DVI-I(又はDVI-D)×1+Sビデオ×1
3種類の端子が一つずつ搭載されているもっとも一般的なレイアウトである。どんな用途にもオールマイティに対応してくれる。
◎DVI-I(又はDVI-D)×2+Sビデオ
ややハイエンドな製品に搭載されることが多いレイアウトで「デュアルDVI」と呼ばれる。
DVI対応のモニタを2台並べて使う「デュアルモニタ」という使い方をするヘビーユーザーに向いている。
6. 付加価値
付加価値といってもいろいろであるが、たとえば・・・
●ビデオカードの2枚挿しで性能をUPする
一枚で満足いかなければ二枚だ!なんと単純な考え。だが、実際に2枚のボードを挿すことで性能をアップさせることができるオプションが用意されているのである。
・NVIDIA SLI (エスエルアイ)
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NVIDIAの2枚挿し技術である「NVIDIA SLI」は2枚の同一対応ビデオチップを搭載したボードを対応マザーボードに挿すことで性能を向上させることができる技術であり、最大1.8倍程度の性能UPが見込める。ただし、古いゲームなど一部のソフトでは性能が下がる場合もあるようなので、最新ゲームでバリバリ遊ぶヘビーゲーマー向けといえるだろう。 |
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具体的には左図のような装着イメージになる。 |
・CrossFire (クロスファイア)
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CrossFireはATIの2枚挿し高速化技術であり、基本的にNVIDIA SLIと変わらない。しかし、対応ビデオチップの組み合わせが少々難しい。
CrossFireの組み合わせには「CrossFire Edition」と名づけられたチップを搭載したボードと、そのボードと同系統のチップを搭載したボードの2枚が必要になる。 |
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左が装着イメージ。CrossFire専用の特殊なコネクタで接続する。
専用コネクタのいらない「Native CrossFire」というのもある。 |
●オーバークロック
オーバークロックとはビデオチップの動作スピードを通常の値よりも高く設定することで性能アップを図ることである。
一部のビデオカードには最初からオーバークロックが施されているものがあり、同一ビデオチップを搭載したボードよりも性能が上がっていることがある。
●独自機能
ビデオチップやビデオカードによっては独自の機能が搭載されていることもある。
たとえばNVIDIAのビデオチップの一部には「PureVideo」という機能があり、動画再生時のCPU負荷軽減や高画質化などをしてくれる。
また、チップメーカーだけではなくボードメーカーでも独自の機能が搭載されていることもある。
●付属品
ビデオカードの付属品は端子の変換コネクタくらいしかないのが一般的だが、中には人気ゲームソフトなど豪華なものが付属している場合もある。
7. 自分のやりたいゲームに合わせる
実はこれが最も重要な要素なのかもしれない。
たいていの場合高性能なビデオカードを求める理由はゲームをプレイするためだろう。
ゲームを快適にプレイするためには高い性能のビデオカードを使うことが確かに手っ取り早いが、それではコストがかかりすぎる。
そこで重要なのはやりたいゲームに最も相性のよいボードをチョイスすることである。
ほとんどのゲームにはそのゲームをプレイするのに必要なPCスペックが示されている。また、ゲームによっては特定のメーカーのビデオカードに最適な調整をしている場合もある。このような場合はそれに合わせたボードチョイスをすることでやや安価なボードを使用しても十分な体感性能を得ることができるのである。
ボード選択の前にやりたいゲームソフトのWebサイトにを見たりして情報を集めておくといいだろう。
では、有名なゲームソフト何点かについて公式サイトによる推奨性能とお勧めのボードを紹介しよう。
タイトル |
CRYSIS |
バトルフィールド2142 |
モンスターハンターフロンティア |
スクリーンショット |
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ビデオカード |
GeForce8800クラス以上
ビデオメモリ640MB以上 |
DirectX9.0c対応
ビデオメモリ256MB以上 |
ビデオメモリ128MB以上 |
CPU |
Core 2 Duo 2.2GHz以上 |
Pentium4 3.0GHzクラス以上 |
Core 2 Duoクラス以上 |
HDD |
空き領域12GB以上 |
空き領域2.2GB以上 |
空き領域800MB以上 |
メモリ |
2.0GB以上 |
1.5GB以上 |
512MB以上 |
お勧めボード |
GeForce 9800クラス以上
NVIDIA系ハイエンドGPU必須 |
GeForce7800クラス以上
どちらかというとNVIDIA系が良い |
GeForece7600クラス以上
RADEON X1600クラス以上 |
さて、ここまでざっくりと紹介してきたがイメージがつかめただろうか。
種類とかはわかったけど実際にどれが自分にあっているのかわからない、と思う人もいるだろう。
じつはこれが難しいところで、コストと体感性能のバランスがあったボードを見つけるのは至難の技である。
自分のやりたいゲームで推奨されているボードを確認してみたり、実際にプレイしているユーザーに聞いてみるなど、情報収集をして、あとは予算との兼ね合いで決めるしかないだろう。
次はCPUをはじめとするPCのすべてのパーツを接続する「マザーボード」について詳しくなろう。
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